デザイン思考と女子サッカー

デザイン思考とサッカー。女子チームで重視される「感性」をキーワードに、異なる世界をつなげて考えてみました。

デザインのチカラ

最近はメールやSNSでの連絡が主体とはいえ、チームではいろいろな配布物を作っています。チラシや合宿のしおり、以前紹介したリフティングカードなど、紙の印刷物が必要な場面は意外と多くあります。

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これら配布物を作る際は、デザインに相当の労力をかけています。割合にすると内容1に対しデザイン20くらい。

これほどデザインを重視する理由は、デザインには人を動かす力があると考えているからです。
いいデザインは新しい見方や発想を生み、その気づきが人を内面から突き動かしてくれます。

ここでいうデザインは、見た目の美しさという意味だけではありません。物事の仕組みや仕掛けの設計も含む、広い意味で使っています。

デザイン思考とは

ではここで、表題のデザイン思考の話に移りましょう。

デザイン思考とは、モノづくりの際の考え方の枠組みです。デザイン自体の話ではありません。独創的なモノづくりを可能にする仕組みとして知られ、例えばiPodが初めて登場したときに話題となりました。

ロジカルシンキング(Logical Thinking)

デザイン思考の対極として、よくロジカルシンキングが挙げられます。分析的で論理的なつながりを求めるロジカルシンキングは、複雑な問題を一つずつ解きほぐしていくような課題解決の場面に適しています。

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デザイン思考(Design Thinking)

これに対してデザイン思考は、より感性的です。問題に対してアイデアがイメージできたところからプロトタイプを作る。それを実際にユーザに使わせてフィードバックを受ける。そしてこのサイクルを繰り返して改善する。という反復的な実践を通じて問題を解決します。

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米国ではデザイン思考を高等教育現場でトレーニングするためのツールキットが用意されており、広く普及しているようです。ロジカルシンキングは強力なツールですが、それだけでは解決できない課題がある、ということなのでしょう。

女子サッカーにデザイン思考が必要な理由

デザイン思考は主に企業や大学等研究機関で用いられるわけですが、実は最近、スポーツ、特にサッカーという競技とも関わるのではないかと考えるようになってきました。

必要なのは「響く」感覚

女子チームの指導をしていると、女子は頭と心が伴わないと動かない、ということを強く実感します。

例えば、練習前の空き時間。男子ならボールとコーンを積んで置いておけば勝手に自分たちで並べて遊び始めます。一方で女子は、ボールとコーンを置いただけではまず動きません。「自主練」の時間だけ設けて集めても、まあ大抵おしゃべりして終わります。

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なので、頭と心をサッカーに向ける仕掛けが必要です。では、頭と心が伴うとはどういう状態か。

一言で言えば、「響く」ということです。理解だけでも納得だけでもなく、その先の感性に届いた状態。楽しい。夢中になれる。こちらの想いが子供たちに響いて共感を得ることができた日は、ものすごい集中力で驚くほどの成果が出ます。逆に響かない日は、パフォーマンスもイマイチです。

チームの課題をデザイン思考で解決する

例えば、先ほどの「練習前の自主練が活用されていない」という問題に、ロジカルシンキングとデザイン思考とでそれぞれ考えてみましょう。

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だいぶん違う方向性になってしまいますね。

子供たちは、目の前の練習の目的や意義や内容といった要素(もちろんそれらも大事ですが)よりも、

  • そのアクティビティは楽しいか?
  • 自分たちは夢中になれるか?

といった感覚を、全体的に、全身で、敏感に感じ取ろうとしています。
そして、いいデザインはこの嗅覚に響くんです。

デザイン思考はコミュニケーションを改善する

  • 楽しいよ!
  • 夢中になってもいいよ!

だから、こちらもそんなメッセージを込めて、練習を、ゲームを、デザインします。練習もゲームも、コーチと選手あるいは選手同士のコミュニケーションです。このコミュニケーションには、どんなデザインが響くかはやってみないと分かりません。よりよいコミュニケーションを実現する=響きあうために、デザイン思考の考え方に沿って試行錯誤を続けています。

自分たちが楽しく、共感できるものを見つけ、育てること。相手を思いやりながら、一緒に動きやすい仕組みを考えて整えていくこと。複雑な時代をたくましくしなやかに生きるための技術として、子供たちと一緒に取り組んでみるのもいいかもしれませんね。

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